『国境の南、太陽の西』談義その1

わたしが、村上春樹作品の中で(今のところ)いちばん好きなのがこの『国境の南、太陽の西』です。

何度も読んでいて思い入れが強い作品なので、一度にまとめて何か書けそうにはありません。

気まぐれに綴っていこうと思います。

(…こんなにゆるいのに「談義」なんてタイトルを付けて良いのかしら?「その2」以降はちゃんと書けるのかしら?)

 

とりあえず、少し前に英語版を入手したのでその写真を。

 

 

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国境の南、太陽の西』英語版

 

 僕はその暗闇の中で、海に降る雨のことを思った。広大な海に、誰に知られることもなく密やかに降る雨のことを思った。雨は音もなく海面を叩き、それは魚たちにさえ知られることはなかった。

 誰かがやってきて、背中にそっと手を置くまで、僕はずっとそんな海のことを考えていた。

村上春樹国境の南、太陽の西』1995年(講談社)p.299

 

 Inside that darkness, I saw rain falling on the sea. Rain softly falling on a vast sea, with no one there to see it. The rain strikes the surface of the sea, yet even the fish don't know it is raining.

 Until someone came and rested a hand lightly on my shoulder, my thoughts were of the sea.

Haruki Murakami
South Of The Border, West Of The Sun
2003, Vintage,p.187, translated by Philip Gabriel
 

 

「そんな海」に思いを馳せて。